研究

技術継承

今日の日本の製造業において、技能継承は大きな社会問題となっています。属人化した仕事はとりわけ顕著にその影響を受ける可能性があり、今まで当たり前のようにできたことが今後もできるとは限らない、そんな未来がやってくるかもしれません。自動車鈑金塗装においても、様々な機材が開発されつつも最終的には人の手に頼る作業が大部分を占める仕事であるため、決して例外ではありません。

20数年、この仕事に従事してきた中で、技能の向上と同時に、進化を遂げる自動車の変化への対応も大きな問題となっていることを実感しています。私共の仕事における技能継承はそっくりそのまま受け継ぐことではなく、社会のニーズや時代の変化に柔軟に対応していくことのできる、動的（フレキシブル）なものでなくてはいけません。

鈑金塗装における技能の継承手法は、日々の作業をしながら技術を磨く職業内訓練（OJT：On the Job Training）が一般的で、伝統産業などでよくみられる徒弟制度も色濃く残っています。しかし、少しでもスムーズに技能習得ができるよう、後進の指導、育成に活用していく手法を模索しく中で、業界関係者や大学などの研究機関と共に、様々な計測機器を活用し、熟練の技術者が持つ暗黙知と呼ばれる内在した技能の可視化、数値化をしていく取り組みを行っています。日頃の業務との兼ね合いが難しい側面もありますが、今後も可能な限りこの取り組みを続け、円滑な技能継承に繋げるべく、少しでも修理業界に、車に依存する私たちの社会にお力添えができればと考えております。

研究実績